糖度98%楽観的恋愛
(……ちっさい男)
悪態をつきたくなる気持ちを抑え、にこりと笑顔を作る。
「じゃあ、そういうことで。またよろしくお願いします」
踵を返して教室に戻っていく私の背中に向かって、チッと苛立たしげな舌打ちが聞こえた。
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「今日はラーメンがいいです」
放課後、保健室に入るなり、私は滝沢先生に今日の希望を伝えた。
試験前だからか生徒はおらず静かだった。
「挨拶もなしかよ」
「あ、こんばんは」
「遅ぇなぁ」
クックッと喉を鳴らしながら滝沢先生が立ち上がる。
滝沢先生のデスクの上には何やら難しそうな本が重ねられている。
「今日は迎え待ってる生徒いねぇし、このまま行こ」
滝沢先生に連れられるままに、暗い廊下を歩いて職員用の駐車場へ向かう。
秋が深まってきており、最近は既に衣替えしている生徒もいる。
私も制服のセーターを着始めていた。
滝沢先生も、今日はタートルネックの服を着ている。
滝沢先生の車に乗るのももう慣れた。
助手席に乗り込んでシートベルトを締めた私は、駐車場に植えられた紅葉している木々を眺める。
「お前、試験大丈夫なの」
「前日に焦って勉強してるようじゃだめですよ」
「うわー、勉強できるヤツの発言だな」
「まぁ、私も全くしないってわけじゃないですけど。ご飯食べ終わったら軽めに復習して早めに寝ます」
「ふーん。じゃあ、今日は俺んち泊まるか?」
「……は?」
「お前の家より俺の家の方が学校近いだろ。朝は早めに送ってやる」