糖度98%楽観的恋愛
――――私と滝沢先生のそんな不思議な関係性が変わり始めたのは、その年のクリスマス頃だった。
冬休み期間中、冬服を買いに来た私は、ショッピングモールで滝沢先生とばったり鉢合わせてしまった。
同年代くらいの優しそうな女の人と、靴を見ているところに遭遇した。
正直かなりびっくりした。
距離感からして間違いなく恋人だろうが、滝沢先生のことは何となくフリーだと思っていたから。
思わずガン見してしまっていると、滝沢先生が不意にこちらを向く。
「……あ。中谷」
滝沢先生が名前を呼んだことで、滝沢先生の隣の女性も私に視線を向ける。
「高等部の生徒」
「……あぁ。初めまして」
滝沢先生が短く私のことを説明すると、女性の方は納得したように私に微笑みかけてきた。
私もそれに応えるようにぺこりと頭を下げる。
長い黒髪に白い肌、男が好きな清楚系美女といえばこんな感じだろう。相当な美人である。
(この人見たことある……中等部の、音楽の先生じゃなかったっけ)
私の通う学校は中等部と高等部が併設されており、高等部の教員が中等部の方に臨時で行くこともあれば、その逆もある。
何だか見たことのあるその女性は、おそらく同じ学校の先生だった。
邪魔をしてはいけないと思い、早々にその場を立ち去った。
意外な一面を見てしまったと思った。
冬のコートを買いに来たのだが、そんなことより滝沢先生に彼女がいたことが衝撃すぎて頭から離れない。
あんなところをうちの生徒が見たら噂が一瞬で広まるだろう。
私の耳に入っていないということは、付き合い始めてまだ間もないのかもしれない。