糖度98%楽観的恋愛



「びっくりした……織田くん、ホームルームいなかったよね?」

「フツーに遅刻。今来たとこ。年始って早起きできないよなー」



クックッと笑いながら私の隣を歩き出した織田くんの髪は去年よりも短くなっていた。

年末に髪を切ったのかもしれない。


織田くんと一緒に体育館に入った私の目にまず最初に入ってきたのは、体育館の入り口付近で生徒たちに囲まれている滝沢先生だった。


人気者の滝沢先生と、織田くんと途中でたまたま合流したとはいえ、本来なら一人ぼっちの私。

こうして見ると別世界の住人に見えた。


滝沢先生の横を通り過ぎて、一年生の列に向かおうとした、その時。



「――――中谷」



後ろから声をかけられた。

私はゆっくりと振り向く。


「あけおめ」


振り返った先にいた滝沢先生は、ゆるりと口元に弧を描きながら気怠げに新年の挨拶をしてきた。


滝沢先生の周囲にいる生徒たちは、滝沢先生が私に声をかけたことに驚いた様子で私と滝沢先生を交互に見つめている。

他の生徒からすれば、この二人って面識あったの? って気持ちだろう。


隣を歩く織田くんも少し意外そうな顔をしていた。


変に目立たせるようなことしないでほしい、と思いながら、軽く会釈をして立ち去る。



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