糖度98%楽観的恋愛





打ち上げが一旦終わった後、残る人は残り、塾などで帰る人は帰る流れになった。


案の定宅間は帰宅しようとする私に付いてきた。

確かこの近くにはうちの学校のカップルがよく使うカラオケルームがあったはずだ。

……成る程、それで、とどこか冷静な自分が納得した。



「美玖。この後、暇?」



するりと私の手を握り、耳元で囁いてくる宅間。

――“自傷行為”という単語が頭に浮かぶ。



「今日は気分じゃない」



いくら嫌な相手でも、自分の口からこんな言葉が出てくるとは思わず、言った後で驚いてしまった。

……何、影響受けてんだ、私。



流されやすい自覚はある。

今までの私なら絶対、男からの誘いをこうもはっきり断ったりはしなかった。

もうここまでしつこいなら一発ヤって黙らせてやろうかと思って、宅間相手だろうが簡単に体を許したはずだ。なのに……。



驚いたのは私だけではなかったようで、言われた側の宅間も少しだけ目を見開いた。

しかしそれも一瞬のことで、宅間はすぐに私の肩に手を回してくる。



「いーよ、そういう時もあるもんね。んじゃ口でしてくんない?」



何が「んじゃ」なのか分からないが、口でもいいからとにかく抜きたいらしい宅間は、さり気なく私をホテルの方向へと連れていく。

……もうどうでもいいや。どう言ったって聞いてくれないだろう。



求められたら応える。

それがいつもの私なのだから、いつも通りにやればいい。





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