糖度98%楽観的恋愛
カラオケから出たら雨が降っていた。
傘を買いたいが、コンビニまでは少し距離がある。
仕方ない、走って駅まで行こう……と覚悟を決めて足を踏み出した時、
「――――……“中谷”?」
激しく打ち付けるうるさい雨の中、その声だけは何故か鮮明に聞き取れた。
振り返れば、傘を差した滝沢先生がいる。
――その瞬間水たまりで足が滑り、尻もちを付いてしまった。
最悪だ。足もスカートもびしょびしょである。
「ぶっ」
眉を寄せて立ち上がり、スカートを絞る私の横で、滝沢先生が噴き出した。
「…………」
「わりーわりー。不機嫌になんなって。中谷、いつもクールなのに意外とドジなんだな?」
睨みつければ、茶化すようにそう返される。
私は無言でその場を立ち去ろうとした。これだけ濡れてしまえばいくら濡れても同じだと思った。
しかし、滝沢先生はそんな私の腕を掴んで引き止めた。
「傘ねぇなら駅まで送ってくけど?」
「……先生、打ち上げ行かなくていいんですか?まだ残ってる生徒の方が多いですよね」
「俺ガキ嫌いだし、別にいーよ」
さらっと打ち明けられた事実に少し驚いた。
あんなに生徒と仲良さそうに絡んでるくせに、本心ではそんなこと思ってるのか、と目の前の男が怖くなる。