不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜

 ◇

「うわあ……」

 真綾は目の前の光景に愕然とした。
 搬入された食材を指定された場所まで受け取りに行った帰りのことだ。
 いつも使っているエレベーターの扉には、大きく【故障中】の貼り紙がしてある。

(どうしよう)

 真綾は台車の上に積まれた段ボール箱をしばし眺め、途方に暮れた。
 箱の中にはこれでもかとじゃがいもが詰まっている。保存がきくので、まとめて十箱も納品してもらったのが裏目に出た。
 エレベーターさえ使えれば食堂まで段差なしで辿り着けるのに、あえなくルートが塞がれている。
 真綾はエレベーター横の階段にチラッと視線をやった。

(仕方ないか)

 遠回りしたところで、段差があるならどちらにせよ台車には載せられない。
 真綾は潔く階段を何往復もする覚悟を決めたのだった。

(さすがにキツイっ)

 三つめの段ボール箱を食堂のある二階まで運び終えた真綾は額に滲み始めた汗を右腕で拭った。
 最初こそ軽快な足どりで段ボールを運んでいたけれど、徐々に足はふらつき、腕も痺れて感覚がなくなってきた。
 真綾は手すりに掴まりながら、疲労困憊になりながら階段を降りた。残る段ボール箱は七箱。
 懸命に力を振り絞り四つめを運び始めるものの――。

「きゃっ!」

 あと数段で二階に辿り着くと、油断したのが仇となった。
 うっかり階段を踏み外し、体勢が崩れる。
 斜めになった段ボール箱から次から次へとじゃがいもが飛び出していく。
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