不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜

「待てよっ!」

 激昂した真綾の父に腕を掴まれた太陽は身体を反転させ、素早く背中をとり腕を締め上げた。

「またしつこく真綾に金をせびるつもりなら、接近禁止命令を出してもらいましょうか?」

 太陽は最終手段に打って出た。
 太陽だって、真綾の父を警察に突き出すような真似はしたくない。
 それでも真綾を守るためなら泥を被るつもりだ。

「実の父親であるあなたが真綾を失望させないでください」

 太陽は最後のダメ押しすると、腕を拘束する力を緩めた。
 脅しだと思われてもいい。権力の濫用だと責められてもいい。
 真綾をこれ以上、苦しめてほしくなかった。

「あんたになにがわかる! 妻を亡くした俺がこれまでどんな想いをしてきたか! なにも知らないくせに!」

 拘束から逃れると、真綾の父は大袈裟に喚き立てた。
 真綾から亡くなった母親の話を詳しく聞いていない。
 しかし、母を亡くした悲しみを背負っているのは彼女も同じだ。
 どうして同じ痛みをわかち合い、手を取り合っていけないのだろう。

(こうやって真綾は無自覚に傷つけられてきたのか)

 父親から受けた傷を見せまいと懸命にもがく真綾を想うと胸が締めつけられる。
 再び父親と対峙しようとしたそのとき、スマホが着信を知らせた。
 着信相手を知らせる画面には真綾の名前が表示されている。

「もしもし」
『鳴海さん、大変なの!』

 真綾からの着信のはずなのに、通話相手は彼女とは似ても似つかない声だった。
 ところが、どこかで聞き覚えがあった。
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