不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
「待って!」
いくら叫んでも、じゃがいもが戻るはずもなく、コントのように階段を転がり落ちる。
真綾は抱えていた段ボールを廊下に置くと、落としたじゃがいもを追いかける。
(今日は厄日だな)
今日の真綾の運勢を占ったら間違いなく『最悪』のふた文字だろう。
ため息をつきながら階段を駆け降りた真綾の瞳に、ある光景が飛び込んでくる。
踊り場にはひとりの男性が立っていた。
(誰?)
真綾は思わず息を呑んだ。
身長は真綾よりも二十センチほど高いだろうか。百八十センチは超えているだろう。
スーツを着ているが、機動隊員だろうか。
日に焼けた肌に、厚めの唇、切れ長の目。人目を引く精悍な顔立ち。
機動隊員にしては長めの黒髪を、センター分けにして後ろに流している。
ジャケットの上からでもわかる分厚い胸板と、逞しい二の腕。
男性の右手にはじゃがいもが何個も握られていた。
「君の落としもの?」
男性は真綾がやって来ると、ニコリと笑いかけた。
真綾はハッと我に返った。
「はい。そうです。拾っていただいてありがとうございます」
落としたじゃがいもを拾ってくれた男性に深々と頭を下げる。
「上から落ちてきたのは、これで全部だと思う」
「助かりました」
真綾は身につけていたエプロンを風呂敷のように広げ、男性からじゃがいもを受け取った。