不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
『もしもし』
「今から言う住所に至急パトカーを手配してくれ。誘拐事件の目撃者だ」
「誘拐?」
「保護対象者の名前は鳴海真綾。年齢二十六。小柄でやせ型。肩までのウェーブヘア。検問も敷いてくれ」
『おいおい、ちょっと待てよ! どういうことか説明しろ』
「春に起きた銀行立てこもり事件、覚えているよな?」
『SATが出動して制圧した事件だろう?』
「犯人は複数の消費者金融から借金をしていた。銀銅鑼ファイナンスもそのひとつだ。取り調べでは口を割らなかったそうだが、第三者からなにかしらの指示があったのは間違いない。犯人はモデルガンを改造する技術も金もない素人だ」
太陽も現場担当者のひとりとして捜査に協力した。
SAT制圧時の犯人の動きは素人同然。
迎撃に有利な飛び道具を持っていたのに、使う気配すらなかった。
「おそらく、金を回収するために銀行強盗するように唆されたんだ。あいつら、今度は死亡保険金を返済に回させる気だ。妻がさらわれたのはそのせいだ」
『わかった。言われた通りパトカーと検問は手配しておく。だから単独行動はするな。今すぐそっちに行くから大人しく待ってろ』
現状を素早く察した小石川から釘を刺される。
同じ制圧班でバディを組んでいただけに、太陽が冷静さを欠いているのに気づいたのだろう。
小石川の到着を待つ時間は地獄のように長かった。
こうしている間にも真綾に危険が迫っている。
覆面パトカーで向かった方が速いとわかっていても、今すぐ飛び出していきたくなる。
「なあ? 真綾は助かるんだよな?」
真綾の父は自分がしでかした罪の重さに耐えきれず、唇をワナワナと震わせていた。
彼も銀銅鑼ファイナンスの連中が、保険金目的で本当に真綾をさらうとは思っていなかったのだろう。