不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
「もしかして、あれをひとりで運んでいるのか?」
男性は視線をやや上に向け、二階の廊下に置いた段ボール箱に目をやった。
「最初は台車で運ぶつもりだったんです。でも、今日はエレベーターが故障していて。それで……」
なぜか言い訳がましくなってしまい、真綾の声はだんだん小さくなっていった。
よくよく考えればひとりで段ボール箱を運ぶ必要はなく、他のスタッフに応援を頼めばよかったのだと、今頃気づいたのだ。
「手伝うよ。一階に置いてあった段ボールを二階まで運べばいいんだよな?」
「そんな! 手伝いなんて!」
手伝いを買って出てもらい、恐縮するばかりだ。
「いいから。任せてくれよ」
男性はそう言うと、軽やかなステップで階段を降りていった。
真綾も慌ててあとに続く。
「結構な量だな。ひとりで運ぶのは大変だっただろう?」
「実は……倒れそうでした」
正直に白状すると男性はハハハと笑った。
「君、新しく食堂に入ってきた新人さんだよね?」
「はい。小田切真綾です」
「自分は警視庁警備部所属、鳴海太陽警部補だ。よろしく」
鳴海は警察官らしく所属と階級を名乗り終え、今度はふっと目を細めた。
堅苦しい挨拶とは正反対の親しみのある流し目にドキリとする。