不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
「三十年以上、機動隊食堂で働いているとなんとなくわかるのよ。どれだけ隠そうとしても、なんか滲み出ちゃうのよねえ」
「隠す?」
そういえば、鳴海は警視庁警備部の所属だ。
よく考えてみれば、機動隊の隊員なら所属する隊名を答えるのが普通なのかもしれない。
「私も人から聞いた話なんだけど、SATには厳しい守秘義務があるらしいのよ。身内にも内緒なんですって。だから、真綾ちゃんもここだけの話ってことにしてちょうだいね」
「あ、はい。わかりました」
真綾はそう返事をすると、台車を押して厨房のとなりにある食料庫にじゃがいもを運び入れた。
(鳴海さん、すごい人だったんだ)
そんな人にじゃがいも運びを手伝ってもらって、申し訳ない気持ちでいっぱいになってくる。
『俺はスープカレーがお気に入り』
好物について熱く語る鳴海を思い出し、真綾は吹き出してしまった。
(本当に不思議な人)
SATという精鋭部隊に所属しながら、物腰が柔らかく、真綾を怖がらせないようにあえてフレンドリーに振る舞ってくれた。
――そして、無類のスープカレー好き。
「ふふっ」
かわいいギャップが、おかしくて仕方ない。
こうして、鳴海の存在は真綾の心に深く刻まれたのだった。