不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
(鳴海さん、恋人いるのかな)
SAT所属だと明かさなくても、鳴海なら女性にモテそうだ。
じゃがいもの入った段ボールをふたつ担いでも、息ひとつ乱さない鍛え上げられた見事な体躯。
清潔感が漂う爽やかな風貌なのに、瞳はどこか情熱的なものを秘めている。
あの眼で迫られたら、女性はたまらないと思う。
鳴海は朝営業の時間帯には、私服でやってくる。
訓練所内の独身寮に住んでいるのは確実だろうが、ずっと独身でいるとは限らない。
公務員は収入が安定していて、結婚相手として引く手数と聞く。
真綾は迷いを振り切るようにブンブンと首を横に振った。
(鳴海さんが優しいからって勘違いしたらダメだ)
この気持ちに名前をつけてしまえば、もう引き返せない。
憧れの存在のままでいた方が、きっと気楽だ。
しがない調理師と、機動隊のエリートであるSAT隊員では住む世界が違いすぎる。
夢は見過ぎない方がいい。叶わなかったときにつらくなるから。
おとぎ話じゃあるまいし、白馬の王子様はそう簡単に現れない。
(鳴海さんが私を相手にするはずないじゃない)
真綾は黙々と手を動かし、厨房の片づけをしたのだった。