不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
そうこうしている間に訓練所内で、最も大きい建物である総合庁舎が見えてくる。
真綾は総合庁舎にしか出入りしないが、敷地内には他にも射撃訓練場や弾薬庫なんかもあるらしい。
訓練所はとにかく広く、たとえ通行証を持っていても、立ち入りを禁じられている場所ばかり。
塀で囲まれているせいで、外界から断絶されたものものしい雰囲気を醸し出しているが、真綾にとっては穏やかに仕事に取り組める得がたい職場だ。
「やっぱりここにあった」
忘れたスマホはすぐに見つかった。
なんてことはない。空っぽのロッカーの中にポツンと取り残され、けなげに主を待っていた。
真綾は今度こそ忘れないようにスマホをバッグにしまった。
「あら、真綾ちゃん。どうしたの?」
スマホを見つけ帰ろうとした際に、織恵とすれ違う。
夜営業の前とあって、織恵は泥付きのネギを何束も肩に担いでいる。
「スマホ忘れちゃって」
「うっかり屋さんねえ。じゃあまた明日」
「はい。また明日」
「そうだ。再来週の提案会、期待してるからね」
織恵からそう言われ、真綾はあいまいにうなずいた。
総合庁舎から出れば、早くも日が暮れ始めていた。