不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
メニューを考える際には栄養バランスと原価に加えて、調理工程にも気を使う。
限られた予算と人員で、機動隊員の胃袋を満たさなければならない。
普通にメニューを考えるよりはるかに難しいが、その分やりがいはある。
カフェテリアで働いていたときは表に出ない作業が多かったが、機動隊食堂ではカウンターに立つこともあるし、厨房からは隊員の顔がよく見える。
食べてくれた人の顔を考えながら、メニューを考えている時間は幸せそのものだ。
(あ、そうだ。蕪を使ったあんかけ焼きそばなんかいいかも)
アイディアが閃いたと同時に、なぜか鳴海の顔がボンっと頭に浮かぶ。
もし、新作が採用されたら鳴海ならなんて言うだろうか。
(な、鳴海さん以外の人も食べるから!)
不純な考えが頭をよぎり、思わず顔が熱くなる。
自分の妄想をしきりに反省しながら、正門を抜けたそのときだった。
「真綾」
名前を呼ばれた方向に顔を向けると、度肝を抜かれた。
「お、とうさん……」
白髪混じりの短髪に銀フレームの眼鏡。神経質そうな目がギロリと真綾を睨んでいる。
最後に会ったときよりも、ずいぶん身体がやつれていた。
「ずいぶんと探したぞ。なんで黙っていなくなったりしたんだ?」
「なんで、ここに?」
居場所がバレるのが早すぎる。真綾が逃げるようにアパートを引き払ってからまだ半年しか経っていないのに。
「真綾の前の職場の人に聞いた」
得意げに話す父を見て、真綾は大きなため息をついた。