不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
(また迷惑をかけちゃった)
前職の上司には、念のため新しい職場を伝えてあった。
きっと父にしつこく食い下がられて、困り果ててたのだろう。
居場所を漏らしたからといって、責められるものでもない。
「頼むよ、真綾! もう真綾だけなんだ」
父は芝居がかった口調で叫ぶやいなや、真綾の手を握り縋りついた。
真綾は弱々しく首を横に振った。
「本当にごめんなさい。お父さんに渡せるお金はないの」
父は金がほしいのだ。
金を貸してくれる人が他にいないから、真綾のもとに来ているだけ。
真綾の給料のほとんどは奨学金の返済と生活費で消えていく。いくらかあった貯蓄も父に金を渡すうちに徐々に目減りし、今はほとんど残っていない。
自分の生活だけで精いっぱい。
父の行動に限界を感じ、悪循環を断ち切るために職と住まいを変えたが、無駄に終わってしまった。
「頼む! 一万円でいいんだ。すぐ返すから! な?」
真綾から突っぱねられると父は両手を合わせ、今度は拝み倒しにかかった。
すぐ返すと言って返してもらった試しがない。
口から出まかせを言っているのはあきらかだった。
「もうやめて……」
これ以上は見ていられない。
金のために娘に頭を下げる父親の姿など誰が見たいものか。
真綾は懇願から目を背け、その脇をすり抜けよう試みた。