不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
(どういう状況?)
自分の置かれた状況に一向に思考が追いつかない。
先ほどまで父の件で苦悩していたのに、今は私服姿の鳴海と歩道を歩いている。
彼の手を煩わせているという事実と、一緒にいられてうれしい気持ちで、情緒がどうにかなりそうだ。
鳴海は真綾のアパートとは真逆の方向へ歩いていく。
彼が何を考えているかわからないが、真綾は後ろをしずしずとついて行くしかない。
正門から出て五分ほど経過したところで、鳴海は真綾を振り返らずに顔を前に向けたまま告げた。
「やっぱりつけられているな」
「え?」
「あの角を曲がったら走るぞ」
「は、はい」
真綾は顔を強張らせながらうなずく。
鳴海の懸念は現実のものになった。結果として、彼の判断は正しかったのだ。
「走れ!」
指示された曲がり角を曲がるやいなや、鳴海は真綾の右手を掴み、猛スピードで走り出した。
足がもつれそうになりながらも、置いていかれないように必死で走る。
「あっ!」
後ろから慌てる声が聞こえてくる。
鳴海が言う通り、父はこっそり後ろをつけていたのだ。
「こっちだ!」
鳴海は商店と商店の間の隙間に大きな身体を捩じ込ませた。
「あ、あの!」
「静かに!」
鳴海は物陰に身を潜めると父から見つからないように、真綾の身体を己の腕ですっぽりと包み込んだ。