不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
「そういえば、鳴海さん。何か用事があったのでは?」
真綾はようやく思い至り、鳴海に尋ねた。
独身寮に住んでいるのならば、用事でもない限り訓練所の敷地の外に出てこないはずだ。
「ああ、夕飯を食べに――」
鳴海が言いかけたところで、ぐうっと軽快に腹が鳴る。
本人より先にお腹の方が空腹を訴えている。
父から逃げ回っている間に、すっかり日が暮れてしまった。
真綾は買い物をあきらめ、鳴海に提案する。
「鳴海さんさえよろしければ、夕飯を食べて行きませんか?」
「や、でも。ひとり暮らしの女性の部屋に男が入るのは……」
「ぜひ今日のお礼をさせてください! 鳴海さんが助けてくれなかったら、今ごろどうなっていたか!」
「うーん。そこまで言うなら」
鳴海は根負けして、仕方なく了承してくれた。
真綾は玄関扉の鍵を開け、部屋の中に鳴海を招き入れた。
「お邪魔します」
六畳の和室とミニキッチン、ユニットバスだけの1DKのこぢんまりとした部屋だが、ひと通りの生活空間は整えてある。
外観こそ古いが気前のよい大家が、建具を交換してくれたので、水回りは綺麗だ。
「座っていてください。すぐに支度しますから」
所在なさげにしていた鳴海は真綾がすすめたテーブル前に置かれたクッションに座った。