不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
(何を勘違いしているのよ。私が鳴海さんに釣り合うはずないじゃない)
食事の誘いに乗ってくれたのは、どうしてもとしつこく真綾が食い下がったからだ。
深い意味なんてどこにもないはず。
真綾は浮かれていた自分を恥じた。
「ごちそうさま。いや、本当にうまかった」
「お茶淹れますね」
真綾はテーブルの上の食器を手早く片付けると、お茶を淹れ、湯呑みをテーブルに置いた。
「あのさ。少し込み入ったことを聞くよ」
鳴海は神妙な顔つきになり、居住まいを正した。
「正門で揉めていたあの人は何者?」
核心を突かれた真綾の身体がビクンと震える。
出来ることなら、父について話したくない。
しかし、逃げるのを手伝ってもらっておいて、誤魔化すわけにもいかない。
「あの人は私の父です」
「父親?」
鳴海は怪訝そうに眉を顰めた。
きっと鳴海の常識では、父の態度が肉親に対するものとは到底思えなかったのだろう。
「この古い木造アパートに住んでいるのと関係あるのか?」
「それは……」
真綾が口ごもると、鳴海の瞳が鋭く光る。
まるで、取り調べを受けている被疑者のような気持ちだ。
真綾には警察官の彼の前で嘘をつく度胸はなかった。
これ以上はお茶を濁せそうもない。
「父はギャンブルに夢中なんです。それであちこちから借金をしていて――」
「娘の君にも金をせびってくる?」
真綾は俯きながら小さくうなずいた。