不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
2.5.恋は転がり落ちるもの
結婚を承諾してもらい、今後の段取りについて話し終わった頃にはとっくに十時を過ぎていた。
最後に互いの連絡先を交換して、その日はお開きにする。
帰り際、真綾はわざわざ玄関まで見送りに来てくれた。
「今日は長居して悪かった。また連絡するよ」
「これからよろしくお願いします、鳴海さん」
律儀に会釈をする彼女に、太陽は露骨に眉を顰めた。
「やめないか、それ」
「それ?」
「その、"鳴海"ってやつ。名前で呼んでよ。俺も"真綾"って呼ぶからさ」
真綾は目をパチクリと何度か瞬かせたあと、恐るおそる口にした。
「ええっと、それじゃあ――太陽さん?」
恥ずかしそうに上目遣いで名前を呼ばれた太陽は、不覚にもドキリとした。
(ねだった本人が寝首をかかれてどうする)
太陽はしっかりしろと心の中で自分を叱咤した。
「あ、うん。その調子でよろしく」
クールに返そうと努力するが、内心顔がにやけそうになるのを必死で堪えていた。
これぐらいで相好を崩していては、先が思いやられる。
「おやすみなさい、太陽さん」
「おやすみ、真綾ちゃん」
太陽は真綾に向かって手を振りながら、アパートをあとにした。