不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
(現実だよな?)
道路を歩く太陽の足取りは驚くほど軽い。
まさか、彼女が結婚を承諾してくれるなんて夢にも思っていなかった。
ここが住宅街でなければ喜びの咆哮を上げていただろう。
しみじみと余韻に浸っていたそのとき、太陽を現実に引き戻すように、左のポケットに入れていたスマホが震え出した。
「なんだよ」
いい気分を邪魔された気がして、億劫な気持ちになりつつ、スマホをポケットから取り出す。
相手は警察学校時代の同期である小石川に違いない。
実は真綾のアパートにお邪魔してから、きっかり二十分おきに電話がかかって来ていた。
しかし、太陽は意図的に小石川からの電話を無視した。
真綾と過ごす時間の方が大事なのは言うまでもない。
「もしもし」
太陽は何度目かわからない着信にようやく応じた。
『おい、いい加減にしろ。お前から食事に誘ったんだろうが! 来られないなら連絡しろよ!』
「悪い。次は俺が全部奢るから」
開口一番、地を這うような低音でわめかれ、太陽は即座に謝る。
小石川とは十九時に駅前の飲み屋に集合する予定だった。
いくら付き合いが長く気心が知れているとはいえ、三時間以上も待ちぼうけにしてさすがに悪いとは思っている。