不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
『結婚ってなんだよ?』
「今日は本当に悪かった。埋め合わせは今度な」
『ちょっと待てよ! 話はまだ――』
太陽は小石川の制止も聞かず、通話終了のアイコンをタップし、スマホをポケットにしまった。
寮まで帰る途中で、コンビニに寄りサンドイッチと好物のレジ横のホットスナックを買い、小腹を満たしたが、どこか味気なく感じられる。
真綾の手料理で腹が膨れたあとなのだ。なおさらだろう。
「うまかったなあ。あのタンドリーチキン」
太陽は誰もいない夜道でしみじみとつぶやいた。
急な来客にも関わらず、真綾が用意してくれたのは太陽の好みにドンピシャの美味しいタンドリーチキンだった。
キッチンに立つ彼女は実に生き生きしていた。
包丁さばきと手際のよさに感心させられ、後ろ姿に見惚れていたのは内緒だ。
真綾には職人のような飽くなき食へのこだわりが垣間見える。
自分の職業に誇りを持っている点は、太陽との共通している。
張り切って料理を作る真綾を。食卓を彩るうれしそうな笑顔を。
出来ることならずっと眺めていたかった。
そんな想いから、つい己の願望を口にしてしまった。
恋人の有無すら確認しないうちに、プロポーズするなんて愚の骨頂だ。
結果としてすべて丸く収まったのは、奇跡としか言いようがない。
『太陽さん』
太陽の名前を呼んでくれた真綾の声を頭の中でリフレインする。
彼女のとろりと甘い声だけが、太陽の身体を熱く滾らせる。
太陽が以前から想いを寄せていたことを真綾は知らないだろう。