不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
◇
(ん?)
柔道場に向かうべく階段を上っていた太陽は異変にすぐに気づいた。
足もとにコロコロと何かがいくつも転がってくる。
どこからどう見ても泥のついたじゃがいもにしか見えないそれを拾い上げ首を傾げる。
(どうしてじゃがいもが?)
じゃがいもをすべて拾い集めたところで、エプロンを身につけた若い女性がじゃがいもを追いかけるように階段を降りてきた。
厨房の主でもある、あの体格のいい調理師ではない。
食堂に行くたびに真壁が騒いでいる新人の女性だ。
「手伝うよ」
「あ、ありがとうございます」
太陽は真綾の顔を間近で眺めて、すぐに納得した。
アーモンド形の目。小さな唇。コロコロと鈴が鳴るような可愛らしい声。
肩の上で揺れる癖のある柔らかそうな髪。
(まあ、たしかに)
これまでとんと興味がなかったが、女性と接する機会が少ない機動隊員の贔屓目なしでも、真綾は抜群にかわいいらしかった。
女性ひとりでの力仕事は大変だろうと、手伝いを申し出たのは、決して下心ではない。
しかし、隣を歩く真綾からはほのかに警戒心が感じられた。
名前と所属を名乗ったものの、親しくもない男性とふたりきりで緊張しているに違いない。