不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
(まだあきらめていなかったのか)
太陽は白飯を口に運びながら、改めて食堂全体を見回した。
すると、真綾の方をチラチラ見る隊員が多いことに気がつく。
どうやら、太陽以外にも彼女を目の保養にしている者が大勢いるらしい。
営業時間中に直接アプローチをかける命知らずがいないのは、じゃがいも騒動のときに居合わせた彼女の上司が後ろから目を光らせているおかげだろう。
しかし、それも時間の問題だ。
真壁然り、抜けがけを企む輩はひとりふたりではないはず。
(急いだ方がいいな)
真綾に意中の男性がいないのなら、誰にでもチャンスは平等にある。
彼女の花咲くような笑顔を他の誰かに見せてたまるものか。
(ん?)
無意識のうちに発した心の声に気がつき、太陽に動揺が走る。
「鳴海さん? どうかしました?」
箸が急にとまったのを不審に思った真壁が尋ねてくる。
「あ、いや。なんでもない」
太陽は心の内を悟られまいと、適当に誤魔化した。
トレーの上に置かれたすまし汁に映る自分の顔は嫉妬に狂う男のそれだった。
太陽は愕然とした。
(彼女に惚れているのか、俺は)
恋人なんていらないと思っていたはずなのに、真綾を誰にも渡したくないと思い始めている。
このとき、太陽はようやく自身の恋心を自覚したのだった。
そうして膨らんだ想いは、真綾から父親の話を聞いた瞬間、見事に暴走する。
――それが、あの一足飛びのプロポーズだ。