不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜

 ひとり残され時間を持て余した真綾は水の入ったグラスに映った自分に問いかけた。

(こんなに上手く進んでいいのかな?)

 結婚するとなった鳴海の行動力には目を見張るものがある。
 真綾がぼうっとしている間に挨拶の段取りを整え、不動産会社を訪問していた。
 ひそかに憧れていた鳴海と結婚して、これから一緒に暮らすなんてまだ実感が湧かない。
 両親への挨拶、新居の決定と真綾にとって都合がよすぎる展開が続き、いつか足もとをすくわれそうで怖くなる。

(お父さん、どうしてるんだろう)

 鳴海に追い返してもらったおかげなのかここ数日、父も大人しくしている。
 正門ではなく裏口から帰るようにしているが、待ち伏せはあれきりで真綾の前に姿を現さない。

(このままあきらめてくれるといいんだけど)

 ほうぼうに金を苦心するようになり、すでに親類縁者からは縁を切られている。
 今や頼れるのは娘の真綾だけ。
 そう簡単に金の無心をやめるとは思えない。

「さっきのマンション、仮押さえできたよ」

 席を外していた鳴海がいつの間にか席に戻ってきていて、真綾はハッと我に返った。

「ありがとうございます」
「引っ越しが楽しみだな」

 楽しげに微笑む鳴海が眩しすぎて、真綾はとても直視できなかった。
 折よくパンケーキとアップルパイがテーブルに運ばれてくる。
 真綾は彼を見ないように顔を伏せつつ、ひたすらパンケーキに舌鼓を打ったのだった。


< 52 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop