不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
(ああっもう!)
こんなの反則だ。うれしすぎてすんなり言葉が出てこない。
「あ、ありがとうございます」
なんとか言葉を捻り出したものの、うまく感謝が伝えられただろうか。
涙ぐみながらお礼を言うと、大きな手が頬に添えられる。
「真綾」
掠れた声で名前を呼ばれて、ドキンと胸が高鳴った。
鳴海の顔が徐々に近づいてきて、目が逸らせない。
息遣いを間近に感じて、ぎゅっと目を瞑る。
(キスされる)
しかしその刹那、鳴海は我に返ったようにさっと真綾から離れていった。
「そろそろ帰ろうか。あまり遅くなるとお互い明日に響くから」
どこか気まずげで、決して真綾の顔を見ようとしない。
真綾は自分の感情を押し殺し、ワンピースの裾を固く握りしめた。
「そうですね」
真綾は冷静を装いなんでもない素ぶりで答えた。
その後、鳴海は真綾の肩を抱き、駐車場までエスコートしてくれた。
(どうしてしてくれなかったの?)
真綾の心の中にはいくつもの疑問が残り続ける。
(キスしてもらえると思った)
あさましい期待で胸がいっぱいになった自分が恥ずかしい。
先ほどの出来事はきっと、ムードに流され魔が差しただけ。
忘れてはいけない。
鳴海と真綾は決して愛し合って結婚したわけではないのだ。