不屈の機動隊員と始めるあまから新婚生活〜この愛、刺激的です!〜
(まだかな?)
夕食も八時を過ぎるとピークが終わる。
真綾は配膳カウンターの片づけをしながらチラチラと食堂の入口に視線を送った。
営業時間終了まであと三十分しかない。
食堂からは徐々に人の気配がなくなっていくが、目当ての人物はまだ現れる気配がない。
(今日は来られないのかも)
あれだけ世間を騒がせた大事件だ。
事態の収拾に時間がかかっているのかもしれない。
真綾は肩を落としながら使用済みのトレーを黙々とダスターで拭き上げていった。
ため息をつきながら最後の一枚に手をかけたとき、階段から話し声が聞こえてきた。
(来たっ!)
真綾は即座に姿勢を正した。
階段から姿を現した私服姿の二十人ほどの集団は、談笑しながら食堂までやって来る。
「おっ。今日は豚しゃぶサラダにカレイの煮つけか。夕飯に間に合って本当によかったな」
誰かがうれしそうに声を弾ませながら、看板に掲げた本日のメニューを読みあげていく。
(鳴海さんだ!)
真綾は思わず胸を高鳴らせた。
視線を上げた鳴海はカウンターの前に立つ真綾を見つけるなり、にっと口角を上げた。
(よかった。いつも通りだ)
数時間前に凶悪事件を制圧してきたばかりとは思えない。
どうなることかとテレビの前でハラハラしていたが、鳴海にとってはありふれた任務のひとつなのだろう。
真綾は気を取り直し、列に並んだ隊員達に食事を提供していった。
ひとりまたひとりと列が動いていき、とうとう鳴海の順番がやってくる。