甘い秘め恋は生徒会室で



 シャープペンの芯を補充しておこう。

 私はペンケースのチャックを引っ張る。

 注意を払わないと、芯ってすぐに折れちゃうんだよね。

 芯をケースから出す前に、シャープペンのキャップと消しゴムを外して机に置いた。



 親友の紗月ちゃんはドラマが大好き。

 今現在、彼女の脳内は大好きなアイドルが占拠中みたい。


「聞いて聞いて」と、昨日見たドラマの感動シーンをハイテンションで語っていて

「それでどうなったの?」とか「ヒロイン可哀そう」なんてリアクションを返しながら、私は取り出したシャープの芯を指に挟んだ。



「なんで春くんってあんな可愛いんだろうね。歌ってるときもドラマ中も可愛いの極みだよ。存在そのものがキュートでラブリーで」


 と、私の机をバシバシたたいていた紗月ちゃんだったのに……

 突然すぎ、いきなりのだんまり。


 急に紗月ちゃんがピタッと会話を止め、ざわつく廊下に顔を向けたんだもん。

 私もつられて、廊下に視線を送っちゃった。




 女子のキャーキャー声のボルテージが、どんどん増していく。

 続いて廊下から聞こえてきたのは、男子集団のワチャワチャ声。


 ヤンチャな笑い声の中に、大好きな低音ボイスも混ざっていると気づいた私。

 心臓がフライング気味にカカカと駆け出してしまった。


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