甘い秘め恋は生徒会室で

 この心臓の飛び跳ねは、間違いなく防衛反応だ。

 急激な胸キュンの過剰摂取は、心停止してしまう恐れあり。

 好きな人を瞳に映す前には、ハートの準備運動は必須事項。

 

 爆つきだした心臓を、なんとか落ち着かせたい。

 私は胸をさすりながらも、ついつい廊下から目が離せない。



「うちのクラスの前を、通るぞ通るぞ!」と、紗月ちゃんは肩を揺らしていて

「かっこいい彼氏がいるでしょ」

 私は突っ込みをひとつ。


 でも「彼氏は現実。アイドル様と学園の王子様は、夢の中だけに存在する崇拝対象なの!」だって。



「夢の中だけじゃないくて、ちゃんとこの世界に存在しているでしょ」と、私は笑っちゃったけれど。

 すぐさま襲われた親友をだましているような罪悪感。

 私の笑みは引きつってしまったんだ。



 紗月ちゃんが廊下にくぎ付けでよかった。

 私のかげりに気づいていないっぽい。



 教室の後ろのドアから、6人ぐらいの男子集団が見えた。

 廊下を大笑いしながら歩いている。


 その中心にいるのは、生徒会長で総長もある東条くん。

 女子には絶対に向けないワイルド笑顔を浮かべながら、男友達の首に腕をまきつけていて。
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