実らない恋の終わらせ方 another
私といえば特に可愛さも、美しさもないし、体型も至って普通。
法学部を出ても、その道には進むことなく一般企業に勤めている私と彼は住む世界が違うのだ。 結婚式帰りということで、多少ドレスアップはしているから、この雰囲気にいても浮いてはいないが、普段は地味な会社員だ。

「俺さ、少しだけ二次会に顔を出してきた。裕也と雪乃は楽しそうだった」
「良かった」
今日は私たち二人の大切な親友同士の結婚式。私たちにとっても特別な日だ。 陸翔を見ると昼間のことを思い出しているのか、その瞳は愛しいものを見る様に甘くなる。


その瞳を一度でもいいから、私に向けて欲しかったーー。
あっ……。
そんな感情を持った自分が最低な気がして、人間失格のような絶望感が襲う。

「二次会はふたりの会社の人も多いでしょ。式にも参加したし披露宴でもたくさん話したからいいの。自分こそいいの?」
「ああ。アイツはわかってくれる」
平静を装って尋ねると、あっさりとした返事が返ってくる。男同士の友情はいろいろあるのかもしれない。

大切な親友の結婚式。その二次会に出ないということは、薄情者だということは百も承知だ。

陸翔がどんな思いで、親友と好きな人を祝福したのかは想像もつかない。
私より辛いはず。それは理解していたが、雪乃を見つめる陸翔をもう見たくなかった。

出会ってから時間の経過とともに、私たち四人の関係も変わっていった。
雪乃と裕也ふたりの時間が増えるにつれ、私たち二人の時間も増える。

じくじくと実らない恋にとらわれ、傷つき心が痛むことが増え勝手に限界を迎えた私の恋。

ふたりが結婚をしたら、終わらせよう。

それはここ一年、ずっと考えてきたことだった。

「そっか」

そんな覚悟を悟られないように、当たり障りのない返事をしていると、なにやら視線を感じて振り返る。
そしてやっぱりと思った。 いつものことなのだが、カップルの女性ですら陸翔に目を奪われていて、隣の男性が面白くなさそうな表情を浮かべつつ彼女を制している。
この男は昔からどこにいても女性からの熱い視線を、涼しい顔で気づいていないふりをする。

「相変わらずだね」
「なにが?」
つい口をついてしまった私の言葉の意味がわからないと言った様子を見せつつ、陸翔は綺麗な所作でグラスを口元に運んで微笑を浮かべた。
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