俺が必ずこの女を殺す【マンガシナリオ】
第5話
○引き続き病院
澪奈を抱え扉を叩く柚季の背後から見回りの警察官がやって来て懐中電灯が当てられる。
警察「君。何してるんだ」
警察の胸ぐらに掴みかかり、無我夢中に尋ねる柚季。
柚季「こいつ!熱が40度以上あるんです!最近階段から落っこちて……っ、その時の後遺症かなんかっすかね……っ!?今の時間診てもらえるんすか!?てか診てもらわねぇと困るんすけど!どこ行きゃいいんすか!?」
*治療を終えた澪奈*
○診察室
ベッドで横たわり、大人しく点滴を受ける澪奈。さっきまでの荒い呼吸はすっかりなく、スヤスヤと眠りについている。
看護師「ただの風邪だよ、もう大丈夫~」
柚季「ありがとうございました…」
こんな真冬に汗ダラダラな柚季。走りまくったせいでくたびれている。
看護師「どう?澪奈ちゃん記憶戻った?」
柚季「いえ…まだ」
看護師「あぁ~、そっか~……」
別の看護師「染谷さんー!ちょっとー」
看護師「あっ、はーい。じゃあちょっと行ってくるわね!澪奈ちゃん見ててあげてね!」
柚季「はい。わかりました」
診察室に残された澪奈と柚季。柚季は頭を抱えている。
柚季(てか殺すどころか病院連れてく、って…。何やってんだよ俺…)
澪奈に視線を移す柚季。多少良くなったものの、まだ苦しそうな表情を浮かべている。
柚季「おい、お前ー…。大丈夫かー…」
ベッドに頬ずえをついて人差し指で澪奈のほっぺをツンツンとつつく。
柚季(こいつほっぺ真っ赤だ……。りんごみたい)
ほっぺが自由自在に凹んでは戻る様子をボー、と眺める柚季。そんなことをしているとあっという間に睡魔が襲ってきてあくびをした時。
ぱく!と柚季の指を澪奈が咥えた。そしておしゃぶりみたいにチュパチュパした。案の定柚季は嫌そうな顔をする。
柚季「うわ!」
柚季(汚ねぇなぁ!もう!)
柚季「やめろ!…げ」
急いで引っこ抜くが……
柚季(ヌメヌメするよー…。もーやだー)
引っこ抜いた指を見つめ、げっそりとした顔をする柚季。澪奈は寝息を立ててスヤスヤと眠っている。
柚季(…ったく!もう!)
澪奈を1人診察室に残し、手を洗いに向かった柚季。
○病院のトイレ
水でジャーと流して、ハンカチなど持っていないのでパッパっ、とその辺で払っている柚季。
柚季(あーほんと酷い目にあったわ。帰ったら殺そ)
○診察室の前
戻ると澪奈は目が覚めていて、あの看護師も戻ってきていた。2人で何か喋っているようだったのでバレないようにこっそり中の様子を伺う柚季。
看護師「あ、澪奈ちゃーん、起きた?」
澪奈「起きた!ゆずきは…?」
看護師「あぁ、トイレかな?さっきまでいたんだけど〜…、あ、でもすぐ来てくれると思うよ〜っ」
澪奈「うん!」
看護師「澪奈ちゃんは柚季くんとラブラブだね〜」
澪奈「うん!昨日ね!ラーメン食べさせてくれたの!」
看護師「いいねぇ〜」
澪奈「うん!あれ、おいしかったなぁ〜」
懐かしむように、頬を緩ませてラーメンの話をする澪奈。柚季のことを全く疑ってなどいない様子。手錠やらなんやら色々あったが澪奈は柚季を純粋に好きでいてくれているということが分かる場面。
看護師「あっ、そういえば澪奈ちゃん、いっぱいお喋り出来るようになったんだね!」
澪奈「うん!出来る!あいうえおー!」
看護師「え!すご〜い!」
澪奈「でしょ!ゆずきのとこ行く!」
看護師「あっ、まだ点滴終わってないからもうちょっとねんねしてようね!」
起き上がろうとした澪奈を看護師が慌てて制する。
澪奈「でもゆずき、寂しがり屋さんだから、私が一緒にいてあげなきゃ泣いちゃうんだー…」
柚季(誰が寂しがり屋で泣いちゃう、だ!)
看護師「えぇ~?そうなのぉ〜?意外~っ」
柚季(変な誤解招きやがって……)
澪奈「うん!でもゆずきは世界で1番かっこいいのっ」
看護師「わぁ〜。そうなんだ〜ぁ」
澪奈「うん!ゆずきのとこ行く!」
看護師「あっ、まだ点滴終わってないからもうちょっとねんねし……」
ずっと2人の会話を盗み聞きしていた柚季が割って入る。
柚季「こら。もうちょい寝てろ、って」
澪奈「あ!ゆずきーっ!」
澪奈が柚季を見るなりすごく嬉しそうに手を伸ばしてきた。
柚季(……なんだよ。嬉しそうにしやがって)
看護師「あ、柚季くん。澪奈ちゃん、もうすぐで点滴終わるから。終わったら帰って大丈夫だからね〜。薬も出しとくから、しばらくは消化のいい食べ物、食べさせてあげてね~」
柚季「…わかりました」
看護師が診察室を出ていく。澪奈が柚季の服をツンツンと引っ張る。
澪奈「ゆずきぃー」
柚季「ん?」
澪奈「病院連れてきてくれてありがと」
柚季「……」
柚季(何だこの感じ…、なんか…むず痒い。妙に心の奥がチクチクする気がする。なんでだ……?)
柚季「……別に。気持ち悪いの治ったか?」
澪奈「治った!」
柚季「そうか、良かったな」
澪奈「うん!」
〈柚季sideのモノローグ〉
────どうしてか、さっき盗み聞きした会話が頭から離れない。
「昨日ね!ラーメン食べさせてくれたの!」と嬉しそうに言っている澪奈の姿が過ぎる。
────最後の晩餐、とか思って食べさせた睡眠薬入りのたった3分の1のラーメンを、こいつは……
「あれ、おいしかったなぁ〜」と言っている澪奈が過ぎる。
────純粋においしい、って思ってたんだよな。
────そうだよな、こいつだって…、
…………………………………生きてんのに。
〈モノローグ終了〉
澪奈「もう元気もりもりになったよ!」
柚季「もりもり、って……、なんだよ、それ。」
柚季(なんか…………調子狂うんですけど)
○夜道
澪奈のおぶって、家に帰る道中。
すっかり元気を取り戻した澪奈が柚季の首に腕を絡ませてくる。
澪奈「ぎゅーっ!」
柚季「あ、おい!首しまるだろ!」
軽く怒鳴ると、腕の力は弱められ、代わりに
かぷ…
柚季の耳たぶを咥えて甘噛みしだした澪奈。
柚季「あ、こら!耳たぶ噛むな!」
カミカミ…
柚季(寄生虫みたいだ)
柚季「やめろ!もう!」
澪奈「ゆずきの耳たぶ、グミみたい!すき!」
柚季「怒るぞ!」
〈柚季sideのモノローグ〉
────それからずっとカミカミされてたけど、正直くすぐったくて、ヌメヌメして、不快だったけど……だけどなんか……、この時の俺はすげぇホッとしていた。
〈モノローグ終了〉
○柚季の家
おぶっていた澪奈を起こさないようにベッドに寝かす。いつの間にか自分の指をちゅぱちゅぱしている澪奈。昨晩もそうやってしゃぶっていた事を思い出す柚季。
柚季(多分眠くなるとやる癖だろう。…ほんっと、おこちゃまだな)
ぐっすり眠る澪奈に優しく布団を掛けてあげる柚季。意外と世話焼きな1面が垣間見える。
柚季(はぁー!やっと終わった!さっさと耳たぶ洗お!全く酷い目にあっ……)
澪奈「ゆずきぃー」
洗面所に行こうとした所でまた服を引っ張られた柚季。振り返ると澪奈が起きていた。
柚季(起きたのかよ……。せっかく寝てたのに)
柚季「…なんだよ」
澪奈「私ね!ゆずきから離れないよっ、ゆずき好きだもん、ずーっと、一緒にいてあげる!どこにもいかないよ!」
真っ赤な頬を緩めニコッ、と微笑む澪奈。
柚季「……なんでちょっと上から目線なんだよ」
ふと、視線を下げる柚季。自身の服をギュッ、と掴む澪奈の右手首に手錠のアザがくっきりと残っているのが見えた。
澪奈の手首のアップ。
〈柚季sideのモノローグ〉
────その日。俺は、手錠をゴミ箱に捨てた。……別に気まぐれだ。意味なんてない。
〈モノローグ終了〉
○洗面所
身をかがめて耳たぶを洗う柚季。洗い終わった後、顔を上げて鏡を見つめると、顔を真っ赤にした自分と目が合う柚季。
柚季(なんだよこいつ……)
〈柚季sideのモノローグ〉
────顔が赤い。
カミカミチュパチュパされてない方の耳も赤い。全身が火照るような感覚が薄気味悪くて仕方ない。
〈モノローグ終了〉
手のひらに水を貯めて顔に勢いよくぶっ掛ける柚季。前髪からぽたぽたと雫が滴り落ちる。肩で息をして、俯いている状態。
ポタ、と雫に混じって涙が落下した。
立っていられなくなって、へたり込むようにその場にしゃがむと、震える手が何かを抑えるかのように、柚季の口元を覆う。
柚季は心の中で思う。
柚季(どうしよ…俺、この女のこと……
殺せないかもしれない───────…)
澪奈の純粋さにやられ、もう自分の中に殺意など芽生える事が出来ない、と確信した柚季。しかしそれは柚季にとって組織に逆らう事を意味している為、複雑な心境であった。
澪奈を抱え扉を叩く柚季の背後から見回りの警察官がやって来て懐中電灯が当てられる。
警察「君。何してるんだ」
警察の胸ぐらに掴みかかり、無我夢中に尋ねる柚季。
柚季「こいつ!熱が40度以上あるんです!最近階段から落っこちて……っ、その時の後遺症かなんかっすかね……っ!?今の時間診てもらえるんすか!?てか診てもらわねぇと困るんすけど!どこ行きゃいいんすか!?」
*治療を終えた澪奈*
○診察室
ベッドで横たわり、大人しく点滴を受ける澪奈。さっきまでの荒い呼吸はすっかりなく、スヤスヤと眠りについている。
看護師「ただの風邪だよ、もう大丈夫~」
柚季「ありがとうございました…」
こんな真冬に汗ダラダラな柚季。走りまくったせいでくたびれている。
看護師「どう?澪奈ちゃん記憶戻った?」
柚季「いえ…まだ」
看護師「あぁ~、そっか~……」
別の看護師「染谷さんー!ちょっとー」
看護師「あっ、はーい。じゃあちょっと行ってくるわね!澪奈ちゃん見ててあげてね!」
柚季「はい。わかりました」
診察室に残された澪奈と柚季。柚季は頭を抱えている。
柚季(てか殺すどころか病院連れてく、って…。何やってんだよ俺…)
澪奈に視線を移す柚季。多少良くなったものの、まだ苦しそうな表情を浮かべている。
柚季「おい、お前ー…。大丈夫かー…」
ベッドに頬ずえをついて人差し指で澪奈のほっぺをツンツンとつつく。
柚季(こいつほっぺ真っ赤だ……。りんごみたい)
ほっぺが自由自在に凹んでは戻る様子をボー、と眺める柚季。そんなことをしているとあっという間に睡魔が襲ってきてあくびをした時。
ぱく!と柚季の指を澪奈が咥えた。そしておしゃぶりみたいにチュパチュパした。案の定柚季は嫌そうな顔をする。
柚季「うわ!」
柚季(汚ねぇなぁ!もう!)
柚季「やめろ!…げ」
急いで引っこ抜くが……
柚季(ヌメヌメするよー…。もーやだー)
引っこ抜いた指を見つめ、げっそりとした顔をする柚季。澪奈は寝息を立ててスヤスヤと眠っている。
柚季(…ったく!もう!)
澪奈を1人診察室に残し、手を洗いに向かった柚季。
○病院のトイレ
水でジャーと流して、ハンカチなど持っていないのでパッパっ、とその辺で払っている柚季。
柚季(あーほんと酷い目にあったわ。帰ったら殺そ)
○診察室の前
戻ると澪奈は目が覚めていて、あの看護師も戻ってきていた。2人で何か喋っているようだったのでバレないようにこっそり中の様子を伺う柚季。
看護師「あ、澪奈ちゃーん、起きた?」
澪奈「起きた!ゆずきは…?」
看護師「あぁ、トイレかな?さっきまでいたんだけど〜…、あ、でもすぐ来てくれると思うよ〜っ」
澪奈「うん!」
看護師「澪奈ちゃんは柚季くんとラブラブだね〜」
澪奈「うん!昨日ね!ラーメン食べさせてくれたの!」
看護師「いいねぇ〜」
澪奈「うん!あれ、おいしかったなぁ〜」
懐かしむように、頬を緩ませてラーメンの話をする澪奈。柚季のことを全く疑ってなどいない様子。手錠やらなんやら色々あったが澪奈は柚季を純粋に好きでいてくれているということが分かる場面。
看護師「あっ、そういえば澪奈ちゃん、いっぱいお喋り出来るようになったんだね!」
澪奈「うん!出来る!あいうえおー!」
看護師「え!すご〜い!」
澪奈「でしょ!ゆずきのとこ行く!」
看護師「あっ、まだ点滴終わってないからもうちょっとねんねしてようね!」
起き上がろうとした澪奈を看護師が慌てて制する。
澪奈「でもゆずき、寂しがり屋さんだから、私が一緒にいてあげなきゃ泣いちゃうんだー…」
柚季(誰が寂しがり屋で泣いちゃう、だ!)
看護師「えぇ~?そうなのぉ〜?意外~っ」
柚季(変な誤解招きやがって……)
澪奈「うん!でもゆずきは世界で1番かっこいいのっ」
看護師「わぁ〜。そうなんだ〜ぁ」
澪奈「うん!ゆずきのとこ行く!」
看護師「あっ、まだ点滴終わってないからもうちょっとねんねし……」
ずっと2人の会話を盗み聞きしていた柚季が割って入る。
柚季「こら。もうちょい寝てろ、って」
澪奈「あ!ゆずきーっ!」
澪奈が柚季を見るなりすごく嬉しそうに手を伸ばしてきた。
柚季(……なんだよ。嬉しそうにしやがって)
看護師「あ、柚季くん。澪奈ちゃん、もうすぐで点滴終わるから。終わったら帰って大丈夫だからね〜。薬も出しとくから、しばらくは消化のいい食べ物、食べさせてあげてね~」
柚季「…わかりました」
看護師が診察室を出ていく。澪奈が柚季の服をツンツンと引っ張る。
澪奈「ゆずきぃー」
柚季「ん?」
澪奈「病院連れてきてくれてありがと」
柚季「……」
柚季(何だこの感じ…、なんか…むず痒い。妙に心の奥がチクチクする気がする。なんでだ……?)
柚季「……別に。気持ち悪いの治ったか?」
澪奈「治った!」
柚季「そうか、良かったな」
澪奈「うん!」
〈柚季sideのモノローグ〉
────どうしてか、さっき盗み聞きした会話が頭から離れない。
「昨日ね!ラーメン食べさせてくれたの!」と嬉しそうに言っている澪奈の姿が過ぎる。
────最後の晩餐、とか思って食べさせた睡眠薬入りのたった3分の1のラーメンを、こいつは……
「あれ、おいしかったなぁ〜」と言っている澪奈が過ぎる。
────純粋においしい、って思ってたんだよな。
────そうだよな、こいつだって…、
…………………………………生きてんのに。
〈モノローグ終了〉
澪奈「もう元気もりもりになったよ!」
柚季「もりもり、って……、なんだよ、それ。」
柚季(なんか…………調子狂うんですけど)
○夜道
澪奈のおぶって、家に帰る道中。
すっかり元気を取り戻した澪奈が柚季の首に腕を絡ませてくる。
澪奈「ぎゅーっ!」
柚季「あ、おい!首しまるだろ!」
軽く怒鳴ると、腕の力は弱められ、代わりに
かぷ…
柚季の耳たぶを咥えて甘噛みしだした澪奈。
柚季「あ、こら!耳たぶ噛むな!」
カミカミ…
柚季(寄生虫みたいだ)
柚季「やめろ!もう!」
澪奈「ゆずきの耳たぶ、グミみたい!すき!」
柚季「怒るぞ!」
〈柚季sideのモノローグ〉
────それからずっとカミカミされてたけど、正直くすぐったくて、ヌメヌメして、不快だったけど……だけどなんか……、この時の俺はすげぇホッとしていた。
〈モノローグ終了〉
○柚季の家
おぶっていた澪奈を起こさないようにベッドに寝かす。いつの間にか自分の指をちゅぱちゅぱしている澪奈。昨晩もそうやってしゃぶっていた事を思い出す柚季。
柚季(多分眠くなるとやる癖だろう。…ほんっと、おこちゃまだな)
ぐっすり眠る澪奈に優しく布団を掛けてあげる柚季。意外と世話焼きな1面が垣間見える。
柚季(はぁー!やっと終わった!さっさと耳たぶ洗お!全く酷い目にあっ……)
澪奈「ゆずきぃー」
洗面所に行こうとした所でまた服を引っ張られた柚季。振り返ると澪奈が起きていた。
柚季(起きたのかよ……。せっかく寝てたのに)
柚季「…なんだよ」
澪奈「私ね!ゆずきから離れないよっ、ゆずき好きだもん、ずーっと、一緒にいてあげる!どこにもいかないよ!」
真っ赤な頬を緩めニコッ、と微笑む澪奈。
柚季「……なんでちょっと上から目線なんだよ」
ふと、視線を下げる柚季。自身の服をギュッ、と掴む澪奈の右手首に手錠のアザがくっきりと残っているのが見えた。
澪奈の手首のアップ。
〈柚季sideのモノローグ〉
────その日。俺は、手錠をゴミ箱に捨てた。……別に気まぐれだ。意味なんてない。
〈モノローグ終了〉
○洗面所
身をかがめて耳たぶを洗う柚季。洗い終わった後、顔を上げて鏡を見つめると、顔を真っ赤にした自分と目が合う柚季。
柚季(なんだよこいつ……)
〈柚季sideのモノローグ〉
────顔が赤い。
カミカミチュパチュパされてない方の耳も赤い。全身が火照るような感覚が薄気味悪くて仕方ない。
〈モノローグ終了〉
手のひらに水を貯めて顔に勢いよくぶっ掛ける柚季。前髪からぽたぽたと雫が滴り落ちる。肩で息をして、俯いている状態。
ポタ、と雫に混じって涙が落下した。
立っていられなくなって、へたり込むようにその場にしゃがむと、震える手が何かを抑えるかのように、柚季の口元を覆う。
柚季は心の中で思う。
柚季(どうしよ…俺、この女のこと……
殺せないかもしれない───────…)
澪奈の純粋さにやられ、もう自分の中に殺意など芽生える事が出来ない、と確信した柚季。しかしそれは柚季にとって組織に逆らう事を意味している為、複雑な心境であった。