ときめき♥沼落ち確定★婚約破棄!
「あの……よろしいですか。レティシア様」

「はっ、はい」

 そこに居たのはメイド服を着ていた気難しそうな中年女性で、いつから居たんだろう……私は鏡に映る美女に夢中で、全く気がつかなかった。

 嘘嘘うそ。やめて。はっ……恥ずかしい!

 けど、貴族は使用人が部屋に居ることが当たり前で、彼らを同じ人と見なさず、何を見られても特に気にしないんだっけ。

 それは、無理ですよね。私、東京の下町に住むきさくな庶民だったし……人は人だよ。

 美女って鏡にある自分の顔に見惚れている時に、こういう声掛けがあったら時、どうやってその場を切り抜けるの?

 美女になったのがこれで初めてなので、気の利いた対応わからない……本当にすみません……異世界転生していたという、ごちゃついた理由説明もここでは出来ず、言い訳も何も出来ないけど、すみません。

 心の中で謝り倒している私に変な顔をしつつ、音もなく部屋の中に居たメイドさんは頭を下げた。

「私はメイド長のテレーズです。城主ヴィクトル様よりご命令で、レティシア様に仕えさせて頂きます。どうぞよろしくお願いいたします」

「は、はい」

 ……メイド長?
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