ときめき♥沼落ち確定★婚約破棄!
「わっ……私は、話はないです!」

 花畑の中を走り出そうとしたら、ぬかるんだ沼に右足を取られてしまった。必死で足を抜こうにも抜け出せず、へたりこんでしまった。

 嘘でしょう……やだもうっ……リアム殿下の前から去ろうとしたら、どうしてこうなるの? 恥ずかしい……穴ほって埋まりたい。

「レティシア。落ち着いてくれ。こういう沼は、慌てて抜け出そうとすればするほど、嵌まっていくものなんだ。ほら……大丈夫だ」

 リアム殿下は服や手が汚れるのも構わずに、助け出してくれた。私の勘違いでなければ、私に向ける表情や視線がすごく優しい。

 彼はハンカチも持っていたけれど、自分よりも足が汚れて座り込んでしまった私を先に拭いてくれた。

「この前も……転んでしまったのに、恥ずかしい……ごめんなさい」

「大丈夫だ。君は……本当に、そういうところも可愛い」

 不意に甘い視線を向けられて、危うく恋の沼に落ちそうになった。

 待って。待って……これって、私のこと……まるで、好きみたいに見えるけど?

 だって私たち、婚約破棄した王子様と、悪役令嬢だよね……?

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