手が届かない憧れの騎士様を庇って命を落としたら、それまで積み上げた善行が認められ彼の守護女神に抜擢されてしまうという羞恥プレイ。
 神の啓示というのは、別にもっともらしい声が聞こえて来る訳ではなかった。いきなり「ヒース・グレンジャーの守護女神にならなければ」という強い使命感が、心の中に芽生えるのだ。

 私だけ雑な啓示なのかと不安になって他の女神仲間に確認したら「初めての時って戸惑うよね。わかるぅ」と、まるで初体験を終えた子に対する反応をされてしまった。

 なにはともあれ、やはり神の啓示というものはあれで合っていたらしい。

 守護することになるのは生前に知っている人なのだと伝えれば女神仲間に「生きていた頃に好きだった人なんでしょう。運が良いわ。良かったわね!」と揶揄われても、苦笑いする以外ない。


 だって、ただ私は格好良い素敵だと憧れていただけで、ヒースとは知り合いでもなんでもない。一度として言葉も交わさぬうちに、死んでしまうことになったのだから。


◇◆◇


「……今日はようやく、夢だった自分の家を持つことが出来た。何もかもあの時に助けてくれた君のおかげだ。本当にありがとう。これから三日ほど遠征に行って来るが、帰ったらまたここに来よう」

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