手が届かない憧れの騎士様を庇って命を落としたら、それまで積み上げた善行が認められ彼の守護女神に抜擢されてしまうという羞恥プレイ。
 ヒースは小さな墓の前に座り故人へ近況を話し終わると、手に持っていた可愛らしい花束を置いた。そして、名残惜しそうに去った。

 私は本来ならば故人を想う彼の言動に切なくて胸が締め付けられるような光景を見る度に、本当に恥ずかしくて堪らなくなってしまう。

 別に無関係の死者を冒涜している訳ではなくて……その小さな墓に書かれた名前は『ミスティ・ロナン』。生前の私の名前だ。

 つまり、ヒースは一年前に自分を庇って死んでしまった私の墓へと度々訪れて、自分の近況を報告し「あの時は、助けてくれて本当にありがとう」と感謝を述べ悲しそうに去って行く。

 ヒースは自分の命の恩人に対し、最大級の感謝の意を示してくれている……彼の人柄がそれだけでも良いとわかってしまう行動だった。

 けど、私! 生きている頃は、ヒースと一言も話してないし! 知人でもないのよ。こっちは彼を一方的に知っていて憧れているだけだったんだから。

 まるで、何も知らない人が見れば相思相愛の恋人が自分を庇って死んだみたいにされてて、なんだかいたたまれない……私個人の意見としてはそこまでしなくても、別に大丈夫。

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