手が届かない憧れの騎士様を庇って命を落としたら、それまで積み上げた善行が認められ彼の守護女神に抜擢されてしまうという羞恥プレイ。
「いいや。俺は一年間も時間があれば墓に通って貰って、ことある毎に感謝をされれば庇った彼女だってもう十分だと思ってそうだと思うだけだよ」

 私が第三者として彼らの会話を聞いている分には賢明なレブロンは、同僚のヒースが貴重な人生の時間を無為に過ごして仕舞わないかと心配しているようだ。

 けれど、頑固な性格のヒースは自分の行動に対し彼に口出しされたくないと思っているみたい。

 別にどちらが正しいという訳でもないけど庇った本人としては、レブロンが述べた意見に賛成だ。彼の言う通りに、私が勝手に動いて偶然命を救っただけなのだし。

 ところでレブロンも聖騎士なので、神に与えられし守護女神が居る。彼の肩辺りに浮いている彼女は彼ら二人が私のことを話していると理解していて、面白そうな表情でにやにやしたまま無言で私に手を振った。

 私は曖昧な表情で、手を振り返すしかない。恥ずかしい……偶然善行になってしまっただけで、全然良い人でもなんでもないのに。

 というか、ヒース・グレンジャーには幼い頃からの婚約者が居たらしいと聞いた時に湧き上がった感情の醜さを彼にも教えてあげたいくらいだ。

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