コワモテ御曹司のごほうびは私!?どうやらスパダリを手に入れてしまったようです
「弊社は業務改善を進めています。1年後には回復するでしょう」
 心配無用だと言いながら、彰は二人が降りたばかりのエレベータに美沙を連れて乗り込んだ。

「恋人と一緒ですので失礼します」
「西郷様、ご来店ありがとうございました」
 黒服店員がお辞儀をして見送ってくれる。
 鬼のような形相で睨んでくる美人さんと、おもしろくなさそうな顔の中年男性が怖かった美沙は、エレベータの階数ボタンに目を向けた。

 下に動き出すエレベーターにこんなにホッとしたのは初めてだ。

「……悪かったな」
 あいつらの視線が失礼だったと謝罪してくれる彰に美沙は首を横に振った。

 地下まで降りると夏目さんが車の扉を開けて待っている。
 降りてくるってどうしてわかったの?
 車の中で再び肩を抱かれているけれど、車の中も演技が必要なの?

「夏目、タイミングは完璧だった」
「タイミングは、ということは何か他に不手際でも?」
「あいつらの態度が最悪だった」
 チッと舌打ちする彰の様子を車のルームミラーを見た夏目は「そんなの今更でしょう」と笑った。

「美沙さん、事前に説明もなかったので驚いたでしょう?」
「あ、はい。今日一日大混乱です」
「ですよね」
 すみませんと夏目は運転をしながら美沙に謝罪する。
 
「あの、さっきの方が政略結婚のお相手ですか? でもお断りしたって……」
 断ったのなら私は必要ないのでは? と美沙は素朴な疑問を彰に投げかけた。
< 25 / 49 >

この作品をシェア

pagetop