コワモテ御曹司のごほうびは私!?どうやらスパダリを手に入れてしまったようです
「さっきの男は綾小路商事の会長だ」
「綾小路商事って……」
 貿易も開発生産も物流も、なんだかいろいろやっている大企業だ。
 子会社もたくさんあって、最近はエネルギー関係に力を入れているとテレビで見た気がする。

「実はうちの会社の業績はあまりよくない」
 知っていたか? と聞かれた美沙は正直に首を横に振った。

「先代と付き合いがあった取引先がだんだんあの綾小路に奪われていてな」
 代替わりすると付き合いもなくなることが多いが、綾小路のせいで露骨だと彰は苦笑する。

「CEOに就任されてから急に会議や異動が増えたのは……」
「まずみんながどんな仕事をしているのか知りたかった。そして適材適所へ振り分けしている最中だ」
 早く立て直したくて多くの会議を入れたが、社員たちが恐れるようになってしまい、あまり良くなかったと彰は髪をかき上げながら溜息をついた。

 あの会議は私たちのためだったの?
 左遷させられるとみんなで怯えて、報告資料を作る時間が増えて残業がイヤだなとか、不満しかなかった。

「綾小路会長のお孫さん、麗香さんと結婚すれば、うちの会社を吸収合併してやると言われているんですよ」
 運転しながら馬鹿にしていますよねと肩をすくめる夏目に、彰も頷いた。

「もし合併したら私たちはどうなりますか?」
「当然、今いる社員たちはリストラされるだろうな」

 吸収合併だから対等ではなく、一方的に取り込まれるってこと?
 管理部門は綾小路商事の人がいるから、わざわざこちらの人を残す必要もなくて、うちの人気商品だけ残してあとはやめてしまえばいいんだ。
 優秀なエンジニアだけ残して、あとはリストラ。
 支援なんて言っていたけれど、ただの脅し……!

 思っていた以上にこの恋人演技が重大な役割だった!
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