コワモテ御曹司のごほうびは私!?どうやらスパダリを手に入れてしまったようです
「特別共有フォルダのせいだろうな」
「そうですね。誰でも閲覧できるようになりましたから」
「でも、閲覧しかできないのに」
 美沙が持ち出せないと言うと、夏目は首を横に振った。

「部長クラス以上と、この統括室のメンバーだけは別の場所に保存できるのです。印刷はできませんが」
 ということは犯人は限られているってこと……?

「夏目、美沙をマンションに」
「かしこまりました」
「……え?」
 もしかして私が疑われている?

「帰り支度をしてください」
「私じゃないです、どうして帰らされるのですか?」
 眉間にシワを寄せ、手で額を押さえている彰とは目が合わない。
 美沙は夏目に促されるまま車に乗り、マンションへと戻った。

「外出はしないでください。鍵をお持ちじゃないでしょう?」
「あ、……はい」
 そうだ。鍵がないから、出かけたらもうここには入れない。

「あの夏目さん、私、本当にやってないです」
「美沙さんが犯人だなんて思っていないですよ。たまたま美沙さんが食堂で聞いた困り事の解決策が、誰かに悪用されただけです」
 必要な物があれば買ってくるので電話をくださいと言い残すと、夏目は出て行ってしまった。

 ……疑われている、よね。
 はっきりとは言われなかったけど。
 私じゃないけれど、誰でも持ち出せるデータじゃないから。
 
 夕方、夏目が豪華弁当と明日の朝食用のベーグルを買ってきてくれたが食べる気になれず冷蔵庫にしまった。
 0時過ぎまで待っていたが、その日は彰は帰って来なかった。
 翌朝、夏目に食事は不要だと連絡し、昨日買ってくれたベーグルを10時頃に、お弁当を16時頃に食べた。

 二人からは何も連絡はなく、帰って来ない。
 せっかく社内がいい雰囲気だったのに、もしこのまま会社の業績が回復しなかったら。
 
 あの派手で綺麗なお嬢様と彰が隣同士で立つ姿を想像した美沙は、ギュッと心が締め付けられたような気がした。
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