コワモテ御曹司のごほうびは私!?どうやらスパダリを手に入れてしまったようです

12.ごほうび

「あ、あの。俺、他のブースで約束があるので……」
「営業部長は今日の午後、あなたがここに行くという話を聞いていないと言っていますが?」
 時計を見ながら後ずさりする翔太の後ろに現れたのは車を駐車場に置き終わった夏目。
 営業部長と電話をしながら「報連相は大切ですよ」と優しく微笑む。

「ここで何をしていたか話してもらおうか」
 前方には猛獣、後方には隙のない男。
 逃げ道がなくなった翔太は、青白い顔でその場に立ち尽くした。

「私は関係ないからもう行っていいかしら」
 夏目の横を通り過ぎようとする麗香のポケットから、ハルはスッとスマホを抜く。

「なにするのよ!」
 急いで奪おうとする麗香を無視し、ハルは隣のおじさんにどうぞとスマホを手渡した。

「不正競争防止法違反、ならびに不正アクセス禁止法違反に該当します。秘密保持義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求(民法415条)と、秘密保持義務違反によって会社の利益減少(財産権の侵害)や外部的信用失墜(名誉権の侵害)も生じますので、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)も可能ですが、いかがいたしましょうか。西郷CEO」
 先ほどまでの軽いノリではないハルの難しい言葉に美沙は戸惑う。
 民法?
 守秘義務?
 ハルさんって、もしかして企業内弁護士?
 
「夏目、営業部の加賀翔太は本日付けで懲戒解雇。ハル、裁判の手続きを」
「懲戒解雇の書類はこちらです」
 夏目さん優秀すぎるでしょ。
 
「告訴状はこちらに」
 準備万端であとは出すだけと笑うハルさんも怖い。

「では続きは警察署で。このスマホは証拠品として押収します。そちらのパソコンも」
 警察手帳を見せたあと、麗香のスマホをファスナー付きのプラスチックバッグへ入れるおじさんに麗香も翔太も、そして美沙も目を見開く。

「……警察?」
 麗香が現状を確認するよりも早く、周りにいた私服警官が麗香と翔太の腕を掴み、パソコンもいつの間にか準備された段ボールへと入れられた。
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