コワモテ御曹司のごほうびは私!?どうやらスパダリを手に入れてしまったようです
「美沙さん、うちの会社のセキュリティソフトわかりますか? パソコンの右下にマークが出ているやつです」
「あ、はい。有名なソフトですよね?」
 小声で夏目に話しかけられた美沙は、パソコンに詳しくなくてもそのくらいはわかりますよと頷いた。

「アキのアメリカの会社です」
「……は?」
「言ったでしょう? うちの会社は中小企業にしてはありえないセキュリティだと」
 いやいや待って、そういうレベルじゃなくない?

 ガッチリ腰を掴まれたままの美沙が横を見上げると、目が合った黒豹のような男はニヤッと笑う。
 
「正直、吸収合併などしなくてもうちの会社は潰れません。アキのアメリカの会社が好調なので」
 他社と合併するくらいなら子会社にして連結決算にしますと夏目はニッコリ微笑んだ。

「じゃ、人事異動は……?」
「みんなが楽しく働けるように、入社時の希望部署へ誘導しているだけです」
「えっと、私は統括室を希望していないですけど?」
 私が希望したのは開発部だ。
 そして希望通り開発部にいたのに。
 
「アキの希望です」
「美沙ちゃん、かわいそ~」
 公私ともにアキに捕まってさ~と笑うハルと、申し訳なさそうな顔をする夏目。

「えっと、……どうして私?」

 コワモテ御曹司のごほうびは私!?
 どうやらスパダリを手に入れてしまったようです。

 私は普通の会社員だったはずなのに――。

「美沙、悪い奴らを追い出した『ごほうび』をくれ」
 彰の唇が自分の口に触れたと思った瞬間、貪るようなキスと甘い吐息が美沙を襲う。
 激しすぎるキスの間に囁かれる「好きだ」の言葉と、優しいキスと激しいキスのリズムに翻弄される。

 待って!
 ここ、ビックサイトのイベントブースのど真ん中!
 しかもライバル会社の綾小路商事のブース!
 
 口を手で押さえながら真っ赤な顔で動揺する美沙を見た猛獣のような男は「これから毎日ごほうびがほしい」と微笑んだ。
 
   END
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