コワモテ御曹司のごほうびは私!?どうやらスパダリを手に入れてしまったようです

SS小説:入社試験(佳作記念公開)

このSS小説は以前、ファンメールとして配信させていただいたものです。
第2回ベリーズ文庫デビュー応援コンテストで佳作をいただいたので記念に公開します。

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SS小説 入社試験
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 入社試験日。
 この日は多くの学生がリクルートスーツに身を包み、真剣な顔でエントランスをくぐってくる。
 有名な大学の子もいれば、地方の私立大学の子も。
 父がCEOを務める会社の入社試験に立ち会った彰は、会議室からエントランスをぼんやりと見下ろした。

「彰、もうすぐ面接がはじまるぞ」
 人数が多いため面接を行ってから筆記試験を行う者、筆記を行ってから面接を行う者に分かれている。
 駅が混まないように時間も少しずつずらし、分散出社だ。

「今年はどのくらい採用を?」
「少し不景気だから各部1名ずつでいいけれど、きっと3名ずつくらい採るのだろうね」
 学校との付き合いもあるしなぁと父が溜息をつく。
「学校に配慮せず、欲しい人材だけでいいのでは?」
「ははは。アメリカはそうかもしれないが、日本はまだまだ難しい」
 父に連れられ面接会場へ。
 父、専務、人事部長が面接官の場所に座り、彰は目立たない後ろの片隅に座った。

「あなたはこの会社でどんなことがしたいですか?」
「僕はこの会社の製品を持っています。とても使いやすくて好きです。だから自分もこの会社でこういう製品を作りたいです」
 ほとんどの学生は模範回答だった。
 おそらく学校から面接マニュアルのようなものを渡されているのだろう。

「僕はこの製品にこういう機能を追加したいと思いました」
 時々、捻った回答をしてくる子もいるが、所詮は学生の思いつく範疇。
 当然、社内の担当者も思いついてはいるが、予算の都合、販売価格などいろいろな都合で諦めた機能も多い。
 こういう学生は、思った物を作らせてもらえないと転職する傾向が高い。

「私はみんなに『ごほうび時間』を提供できるような商品を開発したいです」
 ごほうび時間……?
 退屈になってきた面接で少し気になるキーワードを言った女性に彰は思わず目を向けた。
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