コワモテ御曹司のごほうびは私!?どうやらスパダリを手に入れてしまったようです
「誰向けですか?」
「みんなにです。老若男女問わず誰からも必要とされる商品にしたいです」
 みんなとはなかなか難しい。大人と子供が欲しい物は一致しないからだ。

「弊社の製品はどちらかと言えばビジネスマン向け製品ですが」
「ビジネスマン向けとして開発するのではなく、すべての人にという気持ちで開発をすれば、今まで興味を持たなかった人たちの手に届くのではないでしょうか。頑張っていない人なんていないはずですから、みんなに『ごほうび』は必要です」
 言っていることは唯の理想で、具体的に製品を提案したわけではないけれど、なぜだか「頑張っていない人なんていない」に自分も当てはめてもいいのだと言ってもらった気がした。

 できて当たり前。

 寝る間を惜しんで頑張っても「CEOの息子でしょ」「いいよな。真面目にやらなくたっていつかはCEOじゃん」と努力は誰にも認められない。
 たとえテストで好成績でも、アメリカの大学に進学しても、アメリカで起業しても、会社の運営が順調でも。

 ごほうび時間……か。

 彰は女性の面接資料に目を通した。

 佐藤美沙。
 大学は中レベル、学校成績はまぁ普通。
 家族構成も普通、小中高は公立で、よくいる普通の学生。
 でもこの子が入社したら楽しそうだ。
 俺にも『ごほうび』をくれるだろうか。

 彰は面接官が自由に入力できるコメント欄に記載した。

『俺もごほうびがほしい』
 入力したあと、もちろん削除した。

『ターゲット層を絞って開発しないという発想は少し興味がある』
 保存をし、次の学生のページを開く。

 縁があればまた会えるだろう。
 入社試験が終わった日の翌日、彰はアメリカへ。
 入社試験の結果も、何人入社したのかも知らないまま五年が過ぎ――。

 父が入院し、CEOとなった会社の会議室。
「一人でゆったり過ごす『ごほうび時間』は必要だと思います」
 あぁ、この子だ。
 あの面接の子。入社していたのか。

「……変わっていないな」
 俺も『ごほうび』がほしい。

 彰は秘書の夏目から渡されたタブレットを眺めながら思わず呟いた。
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