コワモテ御曹司のごほうびは私!?どうやらスパダリを手に入れてしまったようです
「待っていたよ、一緒に帰ろう」
 カバンを持とうか? と尋ねてくる元カレの翔太を美沙は無視してスタスタと歩いた。
 三ヶ月前に私を捨てたくせに、今更どういうつもりなのだろうか?

「待ってよ。たまにはご飯くらい一緒に行ったっていいじゃん」
「経理部の可愛い彼女は?」
「うーん、美沙の方がいいって思っちゃったんだよね」
「……は?」
 意味がわからない。
 美沙は眉間にシワを寄せた。
 
 ある日突然、経理部の新入社員とイチャイチャしながらやってきて「こっちと付き合うことにしたから」と私をフッたくせに?
 理由もわからなくてつらかったのに?
 そんな軽い感じで別れたの?

 止まらずに歩き続ける美沙の腕を「ヨリを戻そうよ」と翔太が掴んだ。

「離して!」
 振りほどきたいのにガッチリ掴まれた腕が振りほどけない。
 そういえば、翔太は学生時代にハンドボールをやっていたことを今更思い出した。
 
「いいじゃん、付き合えよ。CEOの話を聞かせろよ」
 翔太の言葉に、美沙は一気に気分が冷めた。

 CEO直轄の部署に異動したからヨリを戻そうって?
 自分を高く評価するように頼んでほしいとかそういうこと?

 ヨリを戻すつもりはないけれど、一瞬でも本当に私の方が経理の若い子よりもよかったんじゃないかと期待した自分が馬鹿みたいだ。
 
「……本当に、最低な男……」
 美沙は唇をグッと嚙みしめた。
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