屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
真顔の冷静な態度で正論を並べられ、赤髪の人は反論もできずにごくりとつばを飲むだけ。


「挙句の果てに、ナンパ?ふざけるな。むしろ、あんたが迷惑料を支払うべきだ」


スーツの男の人は、圧に負けて固まる赤髪の人が手に持つ財布を奪い取ると、そこから千円札を取り出した。


「彼が、落とした酢豚の分も合わせて支払うそうです。1000円で足りますか?」

「は、はい…!」


わたしは出されたお札を受け取り、レジを打った。


「お返しは…、502円になります」


すっかり萎縮してしまった赤髪の人の手のひらにお釣りを置く。

その姿を見ながら、スーツの男の人がわたしに目を向ける。


「502円だと、酢豚の分が入っていませんが――」

「いいんです。ぶつかってしまうようなところに商品を並べていたウチの責任でもありますし」
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