屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜

「…まったく。あなたはお人好しですね」


あきれたようにため息をついたスーツの男の人は、すぐに鋭い目つきで赤髪の人を睨みつける。


「だそうだ。心遣いに感謝するんだな。あと、この逆恨みで今撮った動画を悪意を持って編集してネットに流すようなことがあれば、ウチの弁護士に頼んで法的処置を下すからよく考えろ」

「は、ははははは…はい！なにもしません！お騒がせして…すみませんでした！」

「俺にじゃない。謝るのは、こっちだろう」


スーツの男の人は、わたしのほうへ目配せする。


「さ…先程は、失礼なことをしてしまいすみませんでした…！」


赤髪の人は冷や汗を流しながら買ったお弁当の入った袋を受け取ると、逃げるようにお店から出ていった。


さっきまでの威勢はどこへやら。

わたしも貴斗も、ポカンとしてその後ろ姿を見つめる。