屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
貴斗となら、絶対にこの逆境を乗り越えられる。


そう思っていたのに――。



――それから1ヶ月ほどが過ぎた頃。

思いも寄らない事態が起こる。


突然、お母さんが倒れたのだ。


慌てふためくわたしの隣で落ち着いた様子で救急車を呼んでくれたのは、…なんと阿久津さんだった。

ちょうど阿久津さんがお母さんを訪ねていたときだった。


そのままお母さんは病院に運ばれ、そこで聞かされたのは病気を患っているという事実。

しかも、半年ほど前に診断されていて、お母さんはずっとわたしに隠したままだった。


幸い、すぐにどうなるという病気ではなく、投薬治療で病状はよくなるそうだ。


半年前に診断されたときも、入院しての投薬治療を勧めたらしいのだけれど、『娘1人に店の仕事を負担させるわけにはいかない』と言って断っていたのだそう。
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