屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
そうして今回、病状が悪化し倒れてしまったのだ。



そのあと、お母さんが目を覚ましていた。


「…心晴、ごめんね。急に倒れたりなんかして、びっくりしたでしょ…」

「心臓が止まるかと思ったよ…。病気のことは先生から聞いたよ」


お母さんが思ったよりも元気そうで安心した。

しかし、お母さんの表情はなんだか暗い。


「…心晴。お母さんがこうなってしまった以上もうお店は畳んで、心晴は前みたいにデザインの会社に――」

「なに言ってるの。お母さんが戻ってくるまで、わたしがお店を守るからっ」


病気のことが気がかりで、お母さんは阿久津さんの立ち退き話を聞いてみようと思ったそうだ。

そのお母さんの弱った心に付け込もうと、阿久津さんは何度もウチにきて――。


ほんっと、あの人は…!


前の組合会合のとき、お母さんの態度がどこかぎこちなかったのも、病気のせいでわたし1人に店を押し付けることになるかもしれないという不安がよぎったのだろう。
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