屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
ぼんやりとした意識の中から我に返ってみると、わたしは寄りかかるようにして阿久津さんの腕の中にいた。


「大丈夫ですか…?よく見たら、顔色もあまりよくな――」

「大丈夫です…!平気です…!!」


わたしは慌てて起き上がって、阿久津さんと距離を取った。

まさか、敵に助けられるなんて。


「やはり、おひとりでは無理があるのでは――」

「そんなことありません…!なんだかんだで、うまくいっていますので」


でも本当は、お店をなんとかまわすことにすべてを注いでいて、ゆっくりご飯を食べる時間もないし、睡眠も最低限しか取っていなかった。


「で、…話ってなんですか?もうお店閉めるので、手短にお願いします」

「わかりました。話というのは、実は――」


その阿久津さんから発せられた言葉に、わたしは一瞬ぽかんとした。
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