屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
理由はわかったし、夢を追うことを選んだ貴斗を非難するつもりはい。

…でもせめて、わたしにだけはひと言相談してほしかった。


せっかくここまで戦ってきた“仲間”なのに。


「…心晴はどうするつもりなんだよ。1人じゃどうすることも――」

「わたしはお母さんが戻ってくるまでは、ここを守る責任があるからっ」


だから、1人でも反対し続けるまで。

そんなわたしに、貴斗はある提案をする。


「心晴。1つだけ、1人にならない方法がある」

「…え?」


聞き返すわたしに、貴斗はゆっくりと視線を移す。


「心晴がオレと結婚する。そうしたら、オレが婿養子としていっしょに『キッチンひだまり』を支えることができる」


その提案に一瞬キョトンとしてしまった。


「でも貴斗、音楽の道に進むんだよね?」
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