屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
お客さんの笑顔も次から次へと頭に浮かぶ。


『お母さんが戻ってくるまで、わたしがお店を守るからっ』


お母さんと約束したんだから、なんとしてでも守らなくちゃ…!


そのことしか考えられなかった。

だから、いつの間にか炎と煙に包まれていて――。


「…ケホッ!ケホッ!」


今になって、ようやく息苦しくなっていることに気づいた。


でも、今わたしがここを離れたらっ…。


そのとき、天井からミシミシという鈍い音が聞こえた。

はっとして見上げた途端、突然煙に包まれた天井が落ちてきた…!


「…危ないっ!」


そんな声が聞こえて、振り向く間もなくわたしはだれかに抱え込まれて――。


パリーンッ!!


けたたましいガラスが割れる音とともに、わたしはお店の外へと放り出されていた。
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